前橋家庭裁判所 昭和39年(少ハ)2号 決定 1964年7月07日
少年 U・M(昭二〇・四・一生)
主文
少年を昭和四〇年七月六日まで特別少年院に戻して収容する。
理由
(虞犯事実)
少年は、昭和三八年一〇月一五日、久里浜少年院を仮退院し、前橋保護観察所において保護観察中のものであるところ、右仮退院前理髪店に就職を希望したので、担当保護司の尽力により前橋市○○町○○番地○野理髪店に就職決定し、同月一六日、右保護司及び実母U・K江に附き添われて同店を訪れ、同月二五日から住込勤務することにしたが、遂に勤務に服せず、保護司又は保護者の注意、指示に従わないのは勿論、保護観察官の命じた特別遵守事項を遵守せず、無断外出、外泊を重ね、依然として不良交遊、飲酒、喫煙、遊興、不純性行為等毎日を無為に送り、全然改化遷善の実効なく、遂に同年一〇月三〇日以降その所在さえ判明せず、同年一一月九日、前橋市内を徘徊中警察官に補導されたものである。
「関東地方更生保護委員会の戻収容申請要旨」
少年は、昭和三八年一〇月一五日、久里浜少年院を仮退院し、前橋保護観察所における保護観察中であるのに拘らず、仮退院の際誓約した犯罪者予防更生法第三四条第二項所定の一般遵守事項、前示委員会が定めた特別遵守事項に違反し、適職を自ら放棄し、無断家出、所在不明、不良交遊を重ね、放置すれば罪を犯す虞があると認められる怠惰放縦の生活を継続していて、保護観察による改善、更生を困難ならしめているので、特別少年院に戻して収容し、相当期間既に習得した理髪技能を中心とする職業教育を施し、精神的訓練をなすを必要とするものである。
「事実関係」
一、前橋保護観察所保護観察官の通告による前記虞犯事実
二、前橋警察署員に補導され、前橋保護観察所に連行された後、保護観察官の斡旋により、昭和三八年一一月一一日、前橋市町番地、理容業○原○夫方に住み込んで、一ヵ月余り働いていたけれども、殆んど毎日、終業後、予て知合のA、B等素行不良の友人と共に前橋市内を徘徊、飲酒、パチンコ遊び、ダンスホール出入を反覆累行し
三、同年一二月二一日夜、右Aが少年を誘い出しに来た際雇主○原○夫が年末多忙の折柄誘いに来るなと注意され、夜遊びを、止されるや無断家出して、不良友人宅を転々宿泊し、同月二五日、実母と共に雇主に謝罪して許されたに拘らず、同夜、再び無断家出し、前同様の行動に終止し
四、昭和三九年三月二一日、再度右○原理容店に雇われたけれども、終業後の夜遊び等前同様の行動を繰り返えし、同年四月二七日午後七時頃、入浴と偽つて外出した儘帰宅せず、所在をくらませ、保護観察を回避し
ていたものである。
少年は、前橋家庭裁判所において、昭和三六年一月五日、窃盗保護事件(昭和三五年(少)第八五九号、第一七七〇号)で保護観察の処分を受けた後、恐喝、詐欺等保護事件(昭和三六年(少)第二八三号恐喝)第四六四号(恐喝詐欺等)第四六七号(恐喝)第四七〇号(贓物牙保)第四八四号(恐喝)第六四三号(恐喝)で昭和三七年七月三一日に特別少年院送致の決定を受け、久里浜少年院に収容され、同所で理容師としての技能を習得したので、理容店が人を雇い入れるのに困窮している当今、通常人たる性格、心掛を有する限り就職難という事態なく、通常の社会生活をすることは極めて容易であるのに拘らず、少年は、未だ処世に関する思慮、分別に欠くるところがあり、放縦、徒遊不良交友等虞犯行為を改めず、実母並びにその内縁の夫との精神的連繋も密接でなく、保護能力も十分といい得ない状況であつて、保護観察を続行しても到底その実効を期待し得ない現在、少年の過去における教育効果、虞犯性に鑑み、少年の将来を慎重に考慮すれば、少年の福祉のため、一年間特別少年院に再び収容するのを相当と認める。
尚本件虞犯保護事件は、戻収容申請事件と併合審理したものであつて、右申請事件の理由ともなつているのであるから特に主文において審判の宣告をしない。仍つて主文の通り審判する。
(裁判官 細井淳三)